2025.03.17
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作家情報
甲斐雨端硯(かいあめはたすずり)本舗 13代目 雨宮弥太郎氏の想い
甲斐雨端硯本舗の13代目、雨宮弥太郎氏は、硯を単なる「用の美」として捉えるのではなく、墨をすることを通じて自己と向き合う時間を持ち、硯を癒しと創造の道具と捉えられています。また、静かな心持ちで宇宙のリズムを感じる瞑想のオブジェとしての役割にも期待し創作されています。硯に向き合うことは禅の石庭と向き合うことと同義なのです。
ここでは、雨宮弥太郎氏へのインタビュー内容をご紹介します。
■雨端硯の歴史と魅力
山梨県鰍沢(かじかざわ)で300年以上の歴史を誇る雨端硯。その原石である雨畑石(あめはたいし)は、薄い板状に重なり合った層を持つ粘板岩で、粒子が非常に細かく、硯に最適な石質です。この優れた石質、柔らかな質感を活かして丁寧に掘り進める制作過程では、原石と自身のイメージとの擦り合わせや試行錯誤が醍醐味となっています。抽象的なイメージが鮮明に具現化されていく過程は、まさにアートそのものです。
■硯の奥深さを体感する
ただ墨をするためだけであれば、平らな石でも事足ります。しかし、歴史が物語るように、硯には様々な形があります。粘板岩は地殻変動による大地の強い圧力によって形成された岩石であり、「宇宙を感じる」という感覚は、その石が持つ力によるものかもしれません。硯は正に「瞑想のオブジェ」なのです。
アート作品として飾るだけでも素敵な「硯」は、見る者に新たな魅力を感じさせます。この度、「飛鳥Ⅱ」の船内で初めての展示となる「硯」の奥深さを、ぜひ船内でご覧いただきたいと思います。心を癒し、宇宙のリズムを感じるひとときをお楽しみください。